筋肉ゴリラWeb担当の虎の巻

2019年9月からスタートしたWEB担当ブタゴリラの考察あれこれです!

何を解析すればいいの?KPIの発想とは?

「ウェブKPI」とは?

経営者が考える営業利益と売上高のパーセンテージ設定の様に、「KPI」という考え方をウェブでも活用するという発想から出てきたのが「ウェブKPI」です。ウェブマスターは、ウェブKPIをにらみながら、着実にウェブの効果を高めていって欲しいと思います!

ウェブの指標は「単独の数値」ではない?

企業ウェブマスターにヒアリングすると、多くの企業がウェブサイトを評価するためにさまざまな数字を使っています。ある会社では「ページビュー数」が指標となっていて、別の会社では「資料請求数」が指標というように。

前月が10万PVで、今月が12万PVだったら、今月は伸びたことになるります。
資料請求数が100から150に増えたら、サイトが成長し効果が向上した事になります。

でも、本当に会社が成長し効果が上がっているのでしょうか?

これらは単独の、しかも結果としての数値です。
これらをもって“本当にサイトが成長した”と判断することは、以下2つの意味で難しいと考えています。

1.これらの数字は単独のものなので、他の数字と並べると意味が変わってしまう。

PVが10万から12万に伸びたとしても、
もしかしたら訪問者数も5万人から7万人に伸びていたかもしれない。だとすると、

5万人が10万PV(平均2.0ページ)
7万人が12万PV(平均1.7ページ)

となるわけで、1人あたりのPV数は、先月よりも減少してしまうことになります。
また、資料請求数が指標だったとしても、

1万人が訪問して100人が資料請求(CVR 1.0%)
2万人が訪問して150人が資料請求(CVR 0.8%)

となって、資料の請求率は減少していることになっているかもしれません。

どちらのケースも、実際には「リスティング広告やキャンペーンなどで訪問数を集めたが、それはあまり成果に結び付いていなかった」といった状況など、いろいろ考えられます。
実際、この様な内訳になってしまっているサイトも多いのではないでしょうか。

成果を評価せず広告出稿を慌てて行っているために、コストはかかっているのに本当の効果が出ていない状態となっています。PVや資料請求の実数が伸びるのはうれしいのですが、それに魅かれるあまり、バランスを欠いた投資をすることになっては元も子もありません。

2.単独指標のデータを眺めても“理由や要因”がつかめない。

PVが10万から12万に伸びた。それは“現象”なだけで、背景にどんな理由があったかはわかりません。もしかしたら季節性の要因かもしれない。あるいはたまたまYahoo!ニュースなどの影響力の強いサイトからリンクされたのかもしれません。それは悪いことだではないですが、「理由がわからない」=「再び減る恐れがある」ということでもあります。つまり、減ったときにどういう手を打ったらいいのかわからないのです。それは、安定した経営という考え方から、ほど遠い状態だということになります。

サイトを正しく位置づけるには、要所ごとに「目標」を明確にすることが欠かせません。この目標以外のことは見なくても構わないぐらいに思って大丈夫です!その代わり、その目標に近づいているかどうか、正確に測ることが重要となります。

ウェブの世界でどのようにKPIを使うのか?

KPIという考え方は、問題をすぐに解決して高いレベルの成果を維持することに役立たせてこそ意味があります。だからこそ「ウェブKPI」という言い方が定着してるのですがが、導入するのには、いくつかの注意点があります。

1.ウェブを運営する目標(KGI)を明確に定める。

ここが定まっていないと、目標を生み出す過程(KPI)を決めることができないし、KPIの数値がいざという時の改善に対する警告灯の役目を果たしません。

2.ウェブマスターや経営者がウェブの数字に慣れる。
まずはいつでも数字をもとに議論する癖を付けましょう。
感覚で根拠づけをぜず、KGI(WEBの運営目標)を達成するための過程(KPI)を見つめて議論するようにするのです。

3.ウェブの数字と運営作業との関係を結びつける。
化学の実験でも、政権の支持率など、どんな分野でもそうですが、数値の“変化”を見ることが大切です。

変化には根拠事実があります。何かが行われたから数値の変化が起きるのです。

数値=変化を見るという前提なしにいろんなことを同時に行うから、成果が上がっても原因が特定できないのです。風邪に効くということをいろいろやった結果、どれが改善に役立ったのかわからない状態と似ています。

実際に、ボタンの位置を入れ替えるだけでもクリック率は変わってきます。
ページAが見られることが望ましいなら、ページAへのリンクを増やしたり目立たせたりすべきです。ウェブは難しいという人も多いが、実際にはウェブは「打てば響く」ものです。「あの作業をしたらちょっと良くなったな」という実感を積み上げていくことが大切です。

ウェブにKPIを導入するには、そうした実感を積み上げてから考えると成功しやすいです。まずは目標(=Webの運用目的:KGI)を決める。その目標に関連する項目を洗い出して、どのポイントの数字をチェックすれば目標への動きをチェックできるかを決めるのです。

たとえば、あるリフォーム会社では、資料請求と電話でのお問い合わせを増やすことが目標(KGI)でした。そこで、目標に到達した訪問者とはどんな人かを詳しく洗い出しました。その結果、次のようなことがわかりました。

  1. 地名で検索して訪れた人が多い。
  2. リフォーム事例のページを見てから資料請求した人が多い。
  3. 電話のお問い合わせは会社の近所の人が多く、成約率が高い。

KPIは常に「警告灯を見てすぐに改善行動できる」ものでなければなりません。この場合、リフォーム会社はサイトをどうすれば良いのでしょうか?

“KPIとして、まず「地名検索の回数」を見ることにしよう” また、“「リフォーム事例ページの訪問数」もKPI” となります。

「地域検索を増やすために、全ページに会社の所在地や営業エリアの情報を入れよう。フッターに加えれば不自然ではなく、現在のデザインをあまり変えることなくすぐにできそうだ。電話番号もフッターに同時に加えて、電話問い合わせが増えるようにしよう。トップにも資料請求ページにも電話番号を大書して、成約率の高い電話問い合わせが増えるようにする。さらに、重要なリフォーム事例を増やし、事例を地域別に見ることができるようにする。ついでに地域ごとの気候とリフォームの関連について記事を増やすことにする。」

こうした作業は「リニューアル」と呼ぶには手軽すぎるかもしれませんが、成果に一直線に向かう効果的な「改善」の施策と言えます。

「KPIとして、総訪問者数に対するリフォーム事例のページ閲覧数の割合を見ていくことにしよう。この割合が下がってきたら、対策が必要である。」
「まずは、リフォーム事例のページを詳しく解析するといい。トップページから移動してくる人が多いということがわかったら、トップページを改善しなければならない。そういう目でトップページを見ると、リフォーム事例以外のニュースやバナーが増えて、事例へのリンクが埋もれがちになっていることに気づく。あらためてリフォーム事例へのリンクがわかりやすいようにしてみよう。他のページからももっとリフォーム事例に訪問者を誘導したいところだ。そこで、検索から入り口になっているページに最近のリフォーム事例を画像入りで少し掲載し、それをクリックすると事例のページに移動するようにしていこう。同じようなリンクを毎日3ページに加えていけば、1か月に60ページ以上を改善できる。」

KPIが悪化しているという警告灯が光ったら、すぐにこうした手を打ち、指標を高めることができるです。

コンバージョン率はあくまで「成績表」、売り上げへの過程があってこそのKPI!

通常多くのサイトが注目しているのは「コンバージョン率」です。
“総訪問者数に対する顧客行動数(資料請求や問い合わせなど)”の割合だから、複数の数値を組み合わせて作られる指標です。だれもが客観的に理解できるし、良くなったり悪くなったり変動します。

ではコンバージョン率はKPIとして使えるものでしょうか?
残念ながら、コンバージョン率はKPIではありません。

コンバージョンは「成果」にとても近く “結果論の数字”だからです。これが悪化したとしても、どこが悪いのか、ただちに原因に迫ることができません。すぐ行動に移して改善することもできません。それではKPIとしては働かないためです。

何を成果とするか、という考え方はいろいろありますが、成果=実際の売り上げだとすると、売り上げにつながる資料請求などのコンバージョンは「重要な目標を達成する過程」のポイントであるかのように思えるかもしれません。でも、実際には売り上げとコンバージョンは近すぎなのです。

少なくともWeb上にはコンバージョンまでの段階しかないから、その後工程をWebが管理することできません。営業のフォローが下手で、資料請求があったのに売り上げにならない、ということはWebを良くしても改善されないのです。現実には大半の会社では、資料請求があって見込み客リストが作られれば、営業チームの実力などの要因で一定の割合で契約にいたる確率を持っています。つまり、Webでコンバージョン数が増えれば、それがそのまま契約増に一定の割合で反映されるわけです。

この意味で、コンバージョンは「売り上げへの過程」というより、売り上げというゴールを直接反映する「成績表」であるといえます。経営の世界では、こうしたゴールが直接反映される指標を「KGI」(キーゴールインジケータ、重要成果指標)と呼んでいます。KPIをウェブに導入する際には、「まず目標を定めよう」と先ほど書きましたが、それは実は「KGIを決めよう」という提案だったことになります。

KGIを設定して初めて、そのプロセスの上にKPIをしかけることができるのです。

さてこうして解説してきましたが、実際に皆さんが自分のサイトを振り返ると、次のように思うかもしれません。

  1. うちのサイトはブランディングが目的なので、ゴールが決められません。
  2. 通販ではなく商品や店舗について知ってもらうだけなので、ゴールがありません。
  3. B2Bサイトなので、素人がいっぱい来てもしょうがないのですが……。
  4. 採用、調達、英語版、中国語版など、商品以外にもたくさん目的があって、KPIが絞れません。

KPIについてのご相談で、真っ先に質問されることが多い点でもありますが、こういったサイトがけっこう多いです。不動産会社は物件が多すぎ、しかも売り出し物件がどんどん変わるために、常にチェックする指標が立てにくい。専門学校は学校が各地にあって、教室検索から訪問者が分散し、どこをチェックすればいいのかわからなくなってしまう。などなど…。

こうしたサイトでもゴールを反映するページは作らなければいけませんし、それを管理することで成果に結び付ける方法は必ずあります。すべての企業は、ウェブで成果を出すべきですし、そのための客観的で論理的な手法を持たなければ、成果は偶然まかせになって、経営者は投資判断できなくなってしまいます。成果が上がらない、予算が出ない。この悪循環に入るとジリ貧です…。

次回はKPIを設定するためのKGIの活用についても触れたいと思います。

まとめ

KPIとは以下をポイントをクリアした場所に設定すると良いでしょう。

1. KGI(Webの運用目標=重要成果指標)を明確にし、その過程にKPIを置く。

2. 単独数値にせず、複数の数値を組み合わせる。

3. KPIは数値低迷の際の、原因を究明しやすく、改善施策が打てる数値であるべき。